6月定例会中の全員協議会において、市民病院の移転候補地が「文化会館敷地」に決定したとの説明がありました。
市民の命を守る拠点に関する大きな決定である一方、その検討過程や説明のあり方には課題を感じています。
市民病院の建て替え検討の経緯
高砂市民病院は老朽化や規模の不適正さから建て替えが必要とされてきていました。
市が令和6年1月に策定した「市民病院将来構想」では以下の3案を検討しました。
- 現地建替え
- 移転建替え
- 大規模改修
診療を継続しながら整備できる点や費用面から「移転建替え」が最も望ましいと判断されました。
候補地の検討と選定理由
将来構想で示された「高砂駅周辺または荒井駅周辺」というエリアから、市は次の4案を検討しました。
- 文化会館敷地(市有地)
- 市民プール跡地(市有地)
- A企業所有地(荒井駅南)
- B企業所有地(高砂町内)
アクセス性や防災性、土地取得の可否などを総合評価した結果、最終的に「文化会館敷地」が選ばれました。市は「市有地で取得不要」「緊急搬送に有利」と説明しています。
進め方への疑問
私はこのプロセスに大きな疑問を感じています。
- 候補地の検討や絞り込みが市民や議会に公開されないまま進められたこと
- 「高砂駅周辺または荒井駅周辺」という前提が十分に議論されなかったこと
- 市民合意や意見聴取の機会がなかったこと
さらに、防災面でも課題があります。文化会館敷地は加古川沿いにあり、想定最大規模の大雨では浸水が予測される区域です。市は「止水壁や地盤かさ上げで対応可能」としていますが、災害時の医療拠点としての信頼性に不安が残ります。
文化会館の今後
文化会館敷地が移転候補地に決まったことで、現在の文化会館(本館・東館)は解体を前提に説明が進められています。
しかし、代替施設の場所や内容・時期は未定です。早ければ令和9年度には文化会館が利用できなくなり、複数年にわたって文化活動の拠点が失われる可能性があります。
市は「地域交流センターや他市の施設を活用」としていますが、市内には大ホールの代替施設がなく、市民活動への深刻な影響が懸念されます。
公共施設マネジメントの視点から
市民病院の移転だけでなく、文化会館の今後の扱いについても、進め方に疑問を感じます。
- 全体の公共施設再編計画が示されていない
- 文化施設の将来像や市民合意がないまま解体が前提とされた
- 代替策も示されないまま「まず病院を優先」とされた
これでは、公共施設を場当たり的に並べ替えているだけに見えてしまいます。
公共施設マネジメントとは「順番に建て替える」ことではなく、まちの将来像と財政の見通しを描いた上で戦略的に整備していくことです。
市民病院の移転候補地の問題は、単なる施設の整備順序ではなく「まちの未来をどう描くか」が問われていると考えています。
引き続き、市民の皆様の声をお寄せいただきたく思います。
この記事へのコメントはありません。